私は、二人姉弟なのですが、親が高齢になってきたので遺言書の作り方について調べてみました。
主人の父親が亡くなる前に、公正証書遺言を作成したことがあります。その遺言書のおかげで相続のさいに、もめずに済んだ経験があるからです。
といっても、公正証書遺言を作るには、数万円の費用がかかるんですね。そこで、もっと簡単な自筆証書遺言についても調べてみましたよ。
遺言と遺言書との違い
「遺言」とは、遺族へのメッセージであり、いわゆる手紙のひとつです。
「遺言書」とは、遺産分割対策として残す文書のこと。誰にどの財産を相続してもらうのかを明確に指定した文書。
資産額には関係なく効力があります。
遺言書は、遺産相続のさいにもっとも尊重される文書であり、相続人は、遺言書に従う義務があります。
これらのことから、遺言書の作成は、遺族間での争いや混乱を避けるのに大きな効力となります。
自筆証書遺言と公正証書遺言が代表的な遺言書です。
自筆証書遺言のメリット
- 好きなときに自分で書ける
- 基本的なルールにのっとて作成すれば、法律的にも有効である。
- 手数料が不要。
- 証人がいらない。
- 自分以外に知らせなくて良い。
- 遺言書の変更が簡単。
自筆証書遺言のデメリット
- 遺言書の作成時点で、記入不備がある可能性がある。
- 遺言書の記入不備が原因で、トラブルを引き起こしたり、遺言書の無効となることもある。
- 偽装されたり、隠されたりする可能性がある。
- 遺言書が見つからない場合がある。
- 家庭裁判所の検認が必要。
家庭裁判所の検認とは?
遺言書を発見した人が、家庭裁判所に遅滞なく遺言書を提出して検認をもらわなければならないこと。
公正証書遺言のメリット
- 専門家によって遺言書が作成されるので、不備がなくトラブルになる可能性も低い。
- 公証人役場で原本が保管されるので、偽造紛失の心配がない。
- 検認は不要。
公正証書遺言のデメリット
- 公正証書遺言作成には手数料が必要。
- 承認が二人必要。
- 公証人役場に出かけて行き、打ち合わせをする必要がある。(公証人に来てもらうこともできるが、別途費用が必要)
- 公正証書遺言を書き換える場合、公証人役場に支払う手数料が発生する。
遺言書に付加する「付言」とは?
遺言を遺す者が、どうしてこのように財産を分けたいと思ったのかを遺言書には記載することができます。
この付言を追加することで、家族への気持ちも伝わりやすく、遺産分割に関し遺族の納得も得やすくなるようです。
ただし、付言には公的効力はありません。
公正証書遺言の作り方
法律的に認められ、遺産分割を確定できる公正証書遺言の作り方です。
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- 公証人役場に行き、公証人に公正証書遺言の作成依頼をします。
- 二人の証人が必要。弁護士など法律の専門家でもよいが、成人していれば知人親戚でもかまいません。
- 公証人役場にて、公正証書遺言作成の打ち合わせをする。数回に及ぶ場合もある。(印鑑証明や戸籍謄本などの必要書類を用意するよう公証人からの指示があります。必要手数料についても説明があります。)
- 遺言したい内容を遺言者が口頭で述べ、公証人がそれを筆記して公正証書遺言を作成します。
- 公正証書遺言ができあがると、公証人が遺言者と証人の前で読み上げ確認。証人と公証人の署名捺印をして完成です。
- 原本は公証人役場にて公文書として保管され、遺言者には、正本と謄本が渡されます。
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公正証書遺言の作成手数料など
遺言する財産の価額によって、公証人役場にて計算され、提示されます。
遺言者が入院中などで公証人役場に行けない場合は、公証人が出張として遺言者のところに出向くこともできます。ただし、別途手数料や旅費、公証人の日当が発生して請求されることになります。
自筆証書遺言の作り方
遺言書に書くべきことを書いておかないと無効になることもあります。
①自筆証書遺言というくらいですから、遺言者がすべて自筆で書きます。パソコンや代筆は不可。消えない筆記具を使います。
②年月日は正確に記入します。
③財産を明確に指定します。
・不動産・・登記簿どおりの住所や広さなど。
・現金・・銀行口座名など
・株・・会社名や株数など
④分割の理由や家族への気持ち、想いを書いた「付言」を書き添えます。
⑤遺言者の住所を記入し、署名捺印します。
⑥訂正した場合は、訂正印を押印します。
自筆証書遺言に追加や訂正、削除を行った場合、ただし書きに「追加」「訂正」「削除」といった言葉と文字数を記入します。
【例】○行目「○○」を「○○」と訂正しました。
⑦封筒に入れ、封をしたところには押印すると変造防止となります。
⑧表書きは遺言と書きます。
公正証書遺言や自筆証書遺言よりも簡単な遺言書作成方法
こういった遺言書を書くことができない状況であったり、書くことや公証人役場に依頼することに気が進まない場合は、メモ帳やノートに書くという簡単な遺言書でも、効力を発揮することもあります。
- メモ帳やノートなどを使います。
- 書き方は、自筆証書遺言と同じ要領で記入します。
- 遺言書を書いた正確な日付(○年○月○日)と住所、氏名、押印は、必ず行います。
まとめ
遺言と遺言書との違い
遺言は手紙のひとつであり、遺言書は、公的効力のある遺産分割方法に書かれた文書を指す。
「自筆証書遺言」のメリット
自分ひとりで作成でき、費用もかからない。証人の必要なく、変更も簡単。
「自筆証書遺言」のデメリット
遺言書の記入ミスや不備で、トラブルの原因となったり遺言書として効果がなかったりする可能性がある。また、見つからなかったり紛失の可能性もある。
自筆証書遺言には、家庭裁判所の検認が必要。
「公正証書遺言」のメリット
法律の専門家によって作成されるため、文書に不備がない。公証人役場にて原本保管により紛失や偽造の心配が不要。検認が不要。
「公正証書遺言」のデメリット
証人が二人必要。
公証人役場に出向く必要がある。
公正証書遺言作成には手数料が必要で、変更書き換えのさいにも手数料が発生する。
遺言書に付加する「付言」とは?
遺言者が家族への気持ちを込めて、遺産分割の理由を述べること。公的効力はなし。
公正証書遺言の作り方
公証人役場にて作成を依頼。公証人の指示に従い必要書類を用意、手数料を支払い、証人二人のもとで公正証書遺言を作成してもらう。
完成後、原本は、公証人役場にて保管。正本と謄本は遺言者へ渡される。
公正証書遺言の作成手数料など
遺言する財産の価額により金額は違う。もよりの公証人役場にて計算し提示してもらう。
公証人が遺言者のもとに出向くことも可能だが、別途費用が必要となる。
自筆証書遺言の作り方
遺言者が遺言書作成のルールにのっとり、すべてひとりで書いて作成する。
作成した年月日、署名押印を忘れずに。訂正印やただし書きが必要など、細かいルールがある。
公正証書遺言や自筆証書遺言よりも簡単な遺言書作成方法
メモ帳やノートに遺言書形式の内容を書くことで、効力を発揮することもある。
書き方の基本は、自筆証書遺言と同じ。
主人の父親が公正証書遺言を作るのに付き添った体験談
私の主人の父親が健在のときに、公証人役場で遺言書を作りたいと、父親本人が言い出しました。(義父は思慮深い人で、相続税のことも考慮し、終身保険にも加入してくれていて助かりました。)
理由は、どんなに仲良さそうな家庭でもいざとなると、遺産分割でもめる。そんな実話を、周りの人々からよく聞いていたからのようです。
そこで、私がもっとも近い公証人役場に父親と母親を車に載せて連れて行き、公証人に遺言書の作成依頼。必要書類は、私が用意しました。費用はすべて父が用意しました。
証人は、父親の親友二人です。
公正証書遺言は、それほど難しくもなくすんなり作れた記憶です。
付言も、父の想いといっしょに記載されていました。
その後、父が亡くなってから、公正証書遺言を姉弟に提示することで、遺産分割はもめることなく争いもなく、無事に終えることができました。
借金のある姉夫婦が主人に、相続権を強く交渉してくることを、亡くなる直前まで、父はひどく心配していました。姉弟の揉めごとに加え、父から受け継いだ自営業が続けられなくなるかもしれない。そういったことも案じていたのでしょう。
主人の父が作ってくれた公正証書遺言のおかげで、わが家は相続争いをすることなく過ごせています。
(自分の関係者からの香典は、持ち帰った姉ですが・・)
最近こそ、遺言書を書くことが普通となっていますが、10年以上前では珍しかったことと思います。(公証人役場の方から、高い費用を出して本当に公正証書遺言を作りますか?みたいなこと、聞かれた気がします。多分、あまりいらっしゃらなかったのでしょうね)
その父親の行動力と判断力、後の家族のことを想うやさしい気持ちにとても感謝し、誇りに思っています。